私3

筆を取った理由と言っても些細なことで、私がおかしいのか家族がおかしいのか私が歪んでいたのか欠けているのか分からないし分かりたくもないのだが、他人の「身の上」というものを知りたい。ただそれだけだ。だがしかし教えてと言って教えてくれるほど人は優しくないだろうし、何より自分をさらけ出すというのは勇気を要する出来事だ。だからまずは自分がさらけ出してみようと思う。残念なことにすべてノンフィクションで。

ちなみに私の家は、私が物心つく前から小学五年あたりまで四人家族で、その後からは三人家族の母子家庭だ。
まずは幼稚園の出来事。検便の蓋を開けて少し指についたこと、卒業前アルバムの表紙を自分で描くという行事に曲がった線が許せなくて弾きすぎたこと、同級生のハーフの女の子の手を噛んだこと、泥団子でとても硬いものを作ったこと、母が迎えに来るのが遅くて園長先生におにぎりをもらったこと、お菓子は十五時と十八時の二回あって、十八時のお菓子はみんなには秘密だということ、可愛い女の子がいたこと、無知であったこと。
この頃家であったことは、初めてのお留守番、猫に油をぶっかけて外へ逃す(二度と帰ってこなかった)、カレーを作ろうとした残骸が箪笥から見つかり怒られる、お手伝いのつもりでコップを割って怒られる等。油をかけたのは母が他に希を見ない愛猫家であり、お前よりも大事でお前は殺しても捨ててもいいがこいつらだけは食わせ生かし続けるとまるで呪詛のように囁かれたため、初めてのお留守番のとき昼時を超えおやつの時間に差し掛かっても帰ってこない母に苛立ち擦り寄り愛情表現をする猫により爆発したからだ。とはいえこの狂気的な行動を正当化するつもりはないし、言い訳もしない。その代わり語るのはここだけだ。
通報したければすればいい。もう十数年も前のことだった。残酷すぎたと今の私に後悔の念を口にさせたって、何の意味もない。罪の意識だってない。可哀想に。あの猫は、幼い私の嫉妬に焼かれて死んだのだ。(勿論実際に火をつけた訳ではない。比喩表現である。)