カラコロカラコロと鞄の中の水筒が楽し気に音を立てた。音を殺すように鞄の上から押さえるとそれをあざ笑うかのように一際大きくコロンと鳴いた。
ふう、息を吐いて頭を振る。仕方がない、失敗だった。私は鞄を揺らさないようにゆっくり、けれど大股で歩き始めた。

右手に持っていた読みかけの本を元の場所に戻して図書を出る。相変わらず水筒は楽しそうに場に似合わぬ音を立てていた。

階段の手摺にてを軽く添え、撫でながら駆け下りる。階段を駆けるのも手摺に手を添え撫でるのも、長年染み付いた私の癖であった。
階段を駆け終えると今度はゆったりとした動きで大股で歩き始め自転車置き場に向かった。愛車という割には手を掛けていない、ワインレッドの自転車は、幾度もパンクして自転車を駄目にする私に母が買い与えたパンクしにくいタイヤの自転車だ。二週間に一度空気を入れるように、と書かれたシールも貼ってあるが最後に空気を入れたのは半年以上も前のことだったと記憶している。
というのも私はシャイで面倒くさがりで、スーパーの外に置かれた無料の空気つぎの機械のところに行くまでが面倒、だったり、人に見られるのは嫌だな恥ずかしいなという言い訳をして今に至ったのである。最近はこいつがパンクしないかが気掛かりだ。なんてったって、こいつがないと私は外に出るのも億劫なくらい、面倒くさがりである。